展示ケースからJ
昭和19年の「生徒心得」
中学23回並川厚二郎氏が沖縄県立第二中学校から昭和19年(1944)9月、豊中中学へ転入学された時に渡された「生徒心得」は、横長のザラ紙(19×53)に活字で印刷されている。
前文には「豊中中学校生徒たるの品位を保ち新日本建設の中堅国民となるの抱負を以って(中略)真に有為の人物となるよう」という理念が掲げられている。
以下「敬禮」「教室内」「服装」「校外」等の心得が列挙されているが、これらの中には平成の現在でも通用する(というより通用させて欲しい)文言も多々ある。 「授業ノ始メニハ一同離席起立シテ受持先生ヘ敬礼ヲスルコト」 「教室ニ於テハ静粛ヲ旨トシ苟シクモ惰容アルコトハ許サレナイ」 は、本校が生徒に授業に対する厳しさを求めていることが明記されているし、 「敬礼ハ人ノ本性ニ基ク敬意ノ表現」だから心から敬意を心がけるべしという戦前の修身教育の一端もうかがえる。
学校内だけでなく校外における生活姿勢も律せられているが、交通道徳を始め一般社会における豊中中学生としての自制が列記されている中で、 「低級ナル露天盛り場等ニ徘徊スルコトハ」品位を落とし悪習に染み、不測の災禍を案じての事とはいえ、現在の高校生からみれば噴飯ものとも言えるものではないだろうか。
「低級ナル読書及娯楽ヲ避ケルコト」 「交友ノ選択ニ留意」などの心得は、かっての中等学校が現在のように全人時代ではなく選ばれたものの特権社会であったということを示す一つのあり方とも考えられる。
(豊陵資料室 淺井由彦) |
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