展示ケースからE
入学願 旧制中学校は権威の象徴か
高校全入が当然と考えられている現代人にとっては、かって中等学校以上は権威ある存在の一つであり
「選ばれた者のみが入学を許された」 という感覚は理解に苦しむところであろう。
しかし、資料室の 「展示ケース」 にある文書類の文言からは、 旧制の中等学校(特に府立中学校)が如何に 「権威の象徴」 として君臨していたかという事実を見出すことが出来る。
受験の時に志願者が必らず提出する 「願書」 は 「入学願」 (現在は「入学志願票」)であった。
所定必要事項の記入欄の左側に次の文が印刷されている
「右ハ今般御校第一学年ニ入学志願ニツキ御考査ノ上入学御許可相成度御願候也」
へりくだった文言としかいいようがない。
そのほかの文書類からも同様の発想が見える。
生徒に携帯を義務付けていた 「届及出納簿」 には授業料については 「納付」 という用語が使われ、
また保護者からの連絡欄に 「制服破損ニツキ異装届出仕候」という文も書かれており、
いわゆるおカミに対して謹しんで申し上げる感覚が表れている。
学校側が権威を持って生徒に当る姿勢は「卒業證書」からも窺い知れる。
「右ハ本校ニ於テ中学校ノ課程ヲ卒業セリ、仍テ茲ニ之ヲ證ス」 として證書は
「大阪府立豊中中学校長従五位勳六等清川初一」 の名で授与されている。
官というものの存在権威を明確にしているところは官尊民卑の風潮そのものであろう。
(この證書は昭和十九年三月)
戦前の公立学校機関の文書の中から、当時の教育界の動向を察知し得る資料の一端を紹介した。
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