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展示ケースからK

「計算尺」と「短棒」


 古い教材を並べている展示ケースに『計算尺」がある。
 昭和40(1965)年頃まで使われてきた。 乗法・除法・開法(冪根を求める)・開立(立方根を求める)などの計算を簡単に行うことができるものさし型の計算器具である。
 「これには苦労した」と感慨深げに展示を見た卒業生がいた。 その卒業生が「計算尺」と並んで置かれているバトン状の「短棒」に首をひねった。
 長さ32センチ直径4センチ弱。 側面に「一ノ二 阿部弘」と記名がある。
 この「短棒」は元正倉院事務所長だった高2期阿部氏の寄贈品で、昭和20年、旧制中学入学時に購入させられた物。
 昭和18(1943)年6月「戦場運動班」が新しくできる一方、野球部・篭球部などが廃部された。 「戦場運動班」には行軍競争・手榴弾投擲突撃・障碍通過競争などがあった。 この練習のひとつに上級生は手榴弾を使い、1年生は手榴弾の代わりにこの「短棒」を使った。
 「戦場運動班」の府下大会には戦時体制で廃部になった運動部の部員が活躍したと言われる。
 中学生は入学と同時に男子としてこうした軍事訓練が課されたが、再び繰り返したくはない時代の遺物である。 しかし今にして思えば歴史的遺産としての価値が残る。  (淺井)